自己破産と個人再生を行うと、国立印刷局が発行する『官報』という新聞のようなものに記載されます。それはインターネットでも閲覧することができます。
「官報に載ったら一生借金ができないのでは?」とか思っている方は、本当はそれが正しい考え方なのです。
ただ現実は人口の減少により、貸金業者やクレジットカード会社は新規顧客を獲得できない現実があり、自己破産しているからとか以前に延滞したことがあるからという理由で審査で落とす時代ではありません。
一般に公開される自己破産者が掲載される官報とは?
官報とは一般にも公開されており、行政機関の休日を除く毎日発行され、都道府県庁所在地にある「官報販売所」で販売されています。
発行日には国立印刷局の掲示板や官報販売所の掲示板に掲示され、ウェブサイト(インターネット版官報)でも過去30日間の官報は無料で閲覧することができます。
官報が30日間しか見れないのは「インターネット版官報」ですが、貸金業者やクレジットカード会社、銀行が貸付審査で見ている官報とは全く異なるものです。
国立印刷局では、各府省が円滑に政策を実行できるよう、常に適切かつ確実に対応できる体制を整えています。
官報は、発行日の午前8時30分に、国立印刷局及び東京都官報販売所に掲示するほか、インターネットで配信しています。最高裁判所の判例では、「法令の公布は、官報をもって行うのが相当であり、公布の時期は印刷局本局又は東京都官報販売所における官報掲示時刻である午前8時30分である」とされています。
出典:国立印刷局 官報について
内閣府の要請を受けて製造する特別号外や、非常災害対策本部設置の告示など、特に緊急性を要する官報の場合は、即時の製造・掲示を行っています。
国立印刷局が運営する官報検索サービスとは
官報情報検索サービスは、昭和22年5月3日(日本国憲法施行日)分から直近までの官報の内容を、日付やキーワードを指定して検索・閲覧できる、会員制有料サービスです。
検索に料金が528円かかる場合もありますが、貸金業者は無料で検索できる検索方法は知っています。
日付だけでなく「破産」+「名前」などのキーワードも指定して、より詳細な検索をすることができます。
法律、政令、条約などについては、省庁名、号数を指定して表示することができます。筆者も「インターネット」定期購読していますので、法律のことを調べるのに重宝しています。
官報に記載されている内容
普通に生活している方には縁のない官報ですが、法令の公布や広報、公告(自己破産、個人再生、失踪宣言、会社の組織変更、解散など)が記載されています。
「官報販売所」の方に聞いても、今現在、官報(紙)を読んだいる人は、ほとんどいない状態で定期購読者なら無料(検索方法により一部有料)で見ているそうです。時々興味本位で一部だけ購入して行かれる方がいるらしいです。
国は法令の公布は官報をもってすることが明文で規定されていましたが、公式令は新憲法の施行と同時に廃止されました。
30日間無料で閲覧できる官報と、貸金業者やクレジットカード会社が審査で実際に参考にする官報の違いと、どのように利用しているのかを説明しています。
貸金業者が見る官報の情報は一生閲覧できる
貸金業者やクレジットカード会社、銀行は必ず全国官報販売協同組合(全官報)と定期購読の契約をし、官報(紙)の定期購読者であれば無料で検索と閲覧ができる、国立印刷局が運営する「官報情報検索サービス」を使って破産者を調べています。
昭和22年5月3日以降直近までの自己破産、個人再生など官報に記載された情報は全て検索できます。
全国官報販売協同組合(全官報)は、全国48ヶ所の官報販売所が出資して、中小企業庁認可のもと昭和30年3月10日に設立された事業協同組合です。
出典:全国官報販売協同組合について
全官報が扱う政府刊行物普及の総合窓口として、全国に広がる官報販売所や全国の書店に政府刊行物を供給し、組合ネットワークを通じて国民の皆様に官報や白書、法令解説書などをお届けしています。
また官報に掲載する法定公告の受付を行っています。
直近30日分の官報情報しか閲覧できない「インターネット版官報」を利用しているのは、名簿販売業者か闇金融業者くらいでしょう。
貸金業者は信用情報と官報の情報で審査する
貸金業者やクレジットカード会社が審査をする時には、全国銀行個人信用情報センター(通称:JBA)の10年保存されている官報情報を利用しますがそれ以外にも、国立印刷局が運営する「官報情報検索サービス」を使って審査の最終チェックをしています。
なかにはこの最終チェックに「官報情報検索サービス」を使わないクレジットカード会社がありますが、それで審査の甘いクレジットカード会社があるということになります。もちろん自己破産を行った人であると認識してクレジットカードを発行する場合もあります。
「10年以上で信用情報機関への登録は消えてしまうのだからクレジットカードが作れる!」という、これまでの間違った情報によって、クレジットカードが作れなかった方や偶然にもつくれたという方もいるでしょう。
官報に載ったのに審査に通るケースとは
貸金業者やクレジットカード会社が行う最終チェックに使う国立印刷局が運営する「官報情報検索サービス」には、莫大な量のデータがあり、それを使って審査の最終チェックをしていますが、官報に載ってしまっていても、審査に通る場合があります。
例えば自己破産をしているかどうか調べる場合、昭和22年5月3日以降直近のデータから「名前+住所」「名前+破産」などと検索するのですが、名前と住所が一致して自己破産の記載があれば直ぐ分かりますが、名前と破産だけであれば同姓同名まで含まれます。
珍しい名前の場合は情報が少ないですが、よくある名前であれば全国の同姓同名が情報として表示されるので、県名で絞り、市で絞りとしているうちに特定されてしまいます。
ですから、官報に載ったのにクレジットカードの審査が通った人は、県外(あるいは市外)に引越した人が多いです。
珍しすぎる名前の方は、全国どこに引っ越しても特定されやすいです。他にも色々な要素はありますが、あまり書き過ぎると悪用されるおそれがありますので、これ以上は差し控えたいと思います。
官報と信用情報機関がリンクしているのではない
官報と信用情報機関が情報の共有やリンクしているということはありません。
官報に名前や住所が公表されたからといって、個人信用情報機関に勝手に登録されるのではありません。
実際は、信用情報機関に破産情報が登録されるのは、ご自身か弁護士から送られた『破産申立て受理証明書』や『免責決定通知書』によって登録されています。
今はいるのか分かりませんが、以前は官報に記載された破産者リストを社内データ化する担当者がいました。
個人信用情報機関とは
信用情報を確認できる個人信用情報機関には、クレジット、信販系CIC(シー・アイ・シー)・消費者金融系JICC(日本信用情報機構)・銀行系JBA(全国銀行個人信用情報センター)の3社があります。
「CIC(シーアイシー)」には主に、商品購入の分割払いの使用履歴が登録され、「JICC(日本信用情報機構)」には主に、消費者金融の利用履歴とクレジットカードでのキャッシングの利用履歴、銀行から借りたカードローンの履歴が登録されています。
「JBA(全国銀行個人信用情報センター)」には、一部クレジットカード会社の利用履歴と、銀行から借りたカードローンの利用履歴が登録されています。
JBA(Japanese Bankers Association)は2011年4月1日に、全銀協(2011年3月までの通称:KSC)と東銀協の業務を集約し、一般社団法人全国銀行協会(全銀協)へ改組された組織で、銀行系の信用情報を保有する個人信用情報機関です
自己破産した後の官報記載者でも直ぐに借りれる消費者金融もある
自己破産してブラックになっていても、絶対はありませんが、的を絞れば高確率で借りれます。
通常自己破産から5年以上経たないと借りれないとか言われてきましたが、自己破産から1年経たなくても貸してくれる消費者金融はあります。
官報は一生残りますが、官報に記載されていても、それを承知で融資しています。
仮に取得されたとしても、現在借金がないことは事実ですので、心配する必要はありませんし、官報に掲載されていたからと言って審査を否決する貸金業者はいません。
借金に追われ返済がきつくなれば自己破産を考える方も多いのですが、「官報」に記録が残るという話を聞いて、自己破産や個人再生ではなく任意整理を選択される方も多いかと思います。
銀行の審査では官報を見ることはない
銀行は個人に貸付するカードローン審査において、銀行が審査をすることは一切ありません。
なぜならカードローンやマイカーローンといった商品には必ず保証会社をつけるので、その保証会社が審査を行います。
ですから官報も全国銀行個人信用情報センター(通称:JBA)の信用情報も参考にするどころか、照会することなく見てもいません。
銀行が貸付に対し直接審査を行うのは、住宅ローンや個人事業主、法人への貸付けで、保証会社を付けない銀行プロパー融資の場合だけです。