割賦取引利用可能枠とは、クレジットカードやショッピングローンなどの利用限度額を指し、返済能力に基づいて設定されます。
クレジットカードの入会を申し込んだり、ショッピングローンやスマートフォンの分割契約を申請すれば、信用情報の調査のほかに、利用できる限度枠を設定するための審査をおこないます。
審査基準では、年収や他社からの借入額、生活維持費などを考慮し、支払い可能見込額を算出します。
この見込額には、経済産業大臣が定める割合が適用され、それによって利用可能枠が決定されるのです。
この制度は、消費者が過剰な借入による多重債務を抱えることを防ぐために設けられています。
割賦取引利用可能枠とは
割賦販売法とその目的
割賦販売法は、支払いが複数回に分割される取引、つまり割賦取引に関するルールを定めた法律です。
この法律の目的は、過剰なクレジット利用による消費者被害を防ぐことにあります。
- ショッピングリボ払い
- ショッピング分割払い
- ボーナス1回払い
- ショッピング2回払い
具体的には、消費者が自分の支払い能力以上の利用をしないように、クレジットカード会社に対して支払可能見込額の調査を義務付けています。
これにより、健全なクレジット取引が行われるよう、消費者の保護を図っています。
割賦取引利用可能枠の定義
割賦取引利用可能枠とは、割賦販売法に基づいて設定される、支払可能な範囲内での取引可能な額のことを指します。
この利用可能枠は、クレジットカード会社が利用者の支払可能見込額を調査したうえで設定されます。
この調査は、利用者が無理なく支払いを続けられるようにするために行われるもので、過度な負債を避けるために役立っています。
改正割賦販売法により、支払可能見込額を超える利用可能枠の設定は禁じられており、消費者の健全なクレジット利用を促進しています。
利用可能枠と1回払いの違い
利用可能枠は、主に割賦取引に関する利用限度額を示しますが、1回払いとは異なります。
1回払いは購入金額を一度で支払うタイプの取引で、割賦取引の利用可能枠に影響されません。
ただし、リボ払い、分割払い、ボーナス払いなどの支払期間が2ヶ月を超える取引は割賦取引に含まれ、利用可能枠の範囲内で行われる必要があります。
したがって、割賦取引利用可能枠は、消費者が長期にわたって安定的に支払いを続けられるような金融環境の構築をサポートする重要な機能を果たしています。
割賦取引利用可能枠の設定基準
支払可能見込額の算定方法
割賦取引利用可能枠の審査基準とは、利用者の年収や現在の債務状況などを基に、どれだけ返済可能であるかを判断するものです。
この際、支払可能見込額という指標が重要になります。
支払可能見込額は、年収から年間請求予定額と生活維持費を差し引いたもので、法律に基づき無理なく一年間に支払えるクレジット代金を示します。
年収は自己申告によりますが、年金や不動産収入も含まれる場合があります。
また、生活維持費は経済産業省令で定められ、居住形態や世帯人数によって異なります。
このように、具体的かつ個別的な計算が行われることで、消費者の過剰なクレジット利用を防ぐ体制が整えられています。
包括支払可能見込額の調査
包括支払可能見込額の調査は、クレジットカード会社が行う基本的な義務の一つです。
この調査は、クレジットカードの新規発行や利用可能枠の変更時に実施されます。
特に、支払期間が2ヶ月を超えるクレジットカードによるショッピング取引は包括信用購入あっせんに該当し、より厳重な調査が求められます。
支払可能見込額を超えた利用可能枠の設定は禁止されており、経済産業大臣が告示した率、具体的には0.9を乗じた金額以内に設定されます。
このような枠組みにより、消費者は安心してクレジットカードを利用することができるのです。
クレジットカードのキャッシングの部分は、支払可能見込額調査としてはおこなわれず、貸金業法の総量規制等に基づいて行われます。
年収と生活維持費との関係
年収と生活維持費との関係は、割賦取引利用可能枠の設定において重要な要素となります。
年収は、クレジット返済の基盤となる一方、生活維持費は日常生活に必要な最低限の費用として考慮されます。
例えば、持家で住宅ローンがない家庭の場合、4人世帯以上では200万円と定められており、このような基準があることで、個別の生活環境に対応した支払い能力の評価が可能となります。
支払可能見込額を算定する方法は、【年収-年間支払予定額-法律で定められた生活維持費=支払可能見込額】という計算になります。
年間支払予定額は、1年間に支払い予定のある割賦金額のことで、信用情報機関に登録された情報をもとに算出されます。
信用情報機関には、加盟金融会社が年間の支払(請求)予定額が登録されています。
この関係を踏まえ、年収が高くても生活維持費がかさむ場合は、その分、利用可能枠が調整されることになります。このバランス感覚が、消費者の健全なクレジット利用を支えるのです。
クレジットカードのショッピング利用可能枠の具体例
クレジットカードを新規で発行予定の、年収400万円世帯人数3名、住宅ローンの契約がある人でショッピング利用可能枠の計算をしてみます。
- 税込年収:400万円
- 世帯人数:3人
- 住宅ローン:有
支払可能見込額の算出
年収400万円-生活維持費209万円=支払可能見込額191万円
191万円が支払可能見込額という計算になります。
仮に、他のショッピングローンの支払い予定が年間30万円あるとすれば、年収400万円-年間請求予定額30万円-生活維持費209万円=支払可能見込額161万円
161万円が支払可能見込額となります。
クレジットカードのショッピング利用可能枠の上限の計算
前述しましたとおり、クレジットカードのショッピング利用可能枠は、支払可能見込額の90%以内と決められています。
「支払可能見込額×0.9≧利用可能枠」という式に当てはめると、
ショッピング利用可能枠=支払可能見込額191万円×0.9=171.9万円
171.9万円以下の範囲でショッピング利用可能枠は設定されます。
割賦販売法の改正とその影響
改正前後の主な変更点
2010年12月に施行された改正割賦販売法の目的は、過剰なクレジット利用による消費者被害の防止です。
この改正により、クレジットカード会社は支払可能見込額の調査が義務付けられました。
具体的には、ショッピングリボ払いやショッピング分割払いなど支払期間が2ヶ月を超える取引において、消費者が無理なく支払える利用可能枠を設定することが求められています。
支払可能見込額は、個人の年収から生活費と既存の債務を差し引いた金額を基に算出され、この改正により、経済産業省が定めた基準に従い、より厳格な審査が求められるようになりました。
消費者保護の観点からの変更
改正割賦販売法では、消費者保護の観点からも重要な変更が行われています。
まず、クレジットカード発行時や利用可能枠の更新時には、クレジット契約の支払い能力を十分に調査することが義務付けられました。
これにより、過剰なクレジット利用を防ぐことが期待されます。
また、消費者のクレジット情報は、指定信用情報機関で記録・管理されるようになり、透明性が一層高まりました。
これらの変更により、消費者は無理なくクレジットカードを利用できるようになり、消費者被害のリスクが軽減される効果があります。
クレジットカード会社の審査基準
各社の審査手法
クレジットカード会社は、割賦取引利用可能枠の審査基準を設定するために、独自の審査手法を用いています。
主に、利用者の支払可能見込額を算定し、その情報を基に利用可能枠を設定します。
支払可能見込額は利用者の年収から法律で定められた生活維持費や既存の債務を差し引いて算出され、無理のない範囲でのクレジット利用ができるように配慮されています。
また、クレジットカードの新規発行時や更新時、利用可能枠の増枠申請時には、再度これらの調査が行われ、最新の情報をもとに審査が実施されます。
このような審査手法により、クレジットカード会社は割賦販売法に則った安全な取引環境の提供を目指しています。
審査に影響を与える要因
クレジットカードの審査に影響を与える主な要因には、年収、既存の負債、個人の信用情報などが含まれます。
特に、年収は支払可能見込額の算定に直結しており、消費者がどの程度のクレジット支払いを無理なく行えるか判断するための重要な指標となります。
また、生活維持費は居住形態や家族構成に応じて設定されており、これも審査における重要な要素です。
例えば、持ち家で住宅ローンがない場合と、住宅ローンがある場合では、必要とされる生活維持費の基準額が異なります。
さらに、指定信用情報機関での記録は、これまでのクレジットカードの利用履歴や返済状況を確認するために利用され、信用度の高い消費者は審査を通過しやすくなります。
このように、クレジットカードの審査基準は多岐にわたる要素によって構成されており、慎重に審査を行うことで、消費者の不適切なクレジット利用を未然に防止するとともに、健全なクレジットカード市場の維持に努めています。
支払可能見込額の調査時期を徹底解説
支払可能見込額の調査を行う時期は、クレジットカードの新規申し込みを受け付けた時、クレジットカードの有効期限の更新に近づいた時、あるいはクレジットカードの利用枠の増額申請を受け付けた時に行われます。
- クレジットカード新規発行時
- クレジットカード有効期限更新時
- クレジットカード利用可能枠の増額申請時
同じ発行会社のクレジットカードを複数持っている場合、いずれかのカードが上記の①~③に当てはまった場合、持っている全クレジットカードの利用可能枠が変更となる場合があります。
クレジットカード申し込み時の支払可能見込額調査
クレジットカード会社の公式サイト、電話、郵送などの申込方法があります。
本人を確認できる書類と収入を確認できる書類の提出をします。
審査に通ればクレジットカードが新規発行されます。
利用状況等を総合的に判断し、否決されクレジットカードの新規発行を見送られることもあります。
クレジットカード有効期限更新時の支払可能見込額調査
更新日の6ヶ月前から更新日までの間に、更新のお知らせがクレジットカード会社から利用者に届きます。
クレジットカード会社に登録された内容と、信用情報機関(CIC)に登録された情報を基に、途上与信を行い、利用状況と支払可能見込額調査によって、更新をさせるかどうかの判断をします。
更新の審査で、利用可能額が変更される場合もあります。
クレジットカード利用可能枠の増額申請時の支払可能見込額調査
クレジットカード会社の公式サイト、電話、郵送などの申込方法があります。
収入が確認できる書類を提出します。場合により本人確認書類の提出を求められることもあります。
増額申請申込書に記入された内容と、クレジットカード会社に登録された内容の確認および信用情報機関(CIC)に登録された情報を基に途上与信を行い、利用状況と支払可能見込額調査によって、増額をさせるかどうかの判断をします。
増額がされたとしても、新しくカードが発行されることはありません。
クレジットカード会社の内部で機械的に操作されます。
安心して利用するためのポイント
利用前に知っておきたいこと
クレジットカードにおける割賦取引利用可能枠を適切に理解し、活用することは重要です。
まず、割賦取引利用可能枠がどのように設定されるかを知っておくことが大切です。
割賦取引は、買い物の際に支払いを分割できる便利な方法ですが、支払い能力を越えて使用すると後に返済が困難になる可能性があります。
そのため、割賦販売法に基づいて各クレジットカード会社が利用者の支払可能見込額を算定し、それに基づいてショッピングご利用可能枠を設定します。
これにより、過剰なクレジット利用による消費者被害を未然に防ぐことを目的としています。
安心して割賦取引を利用するためには、利用前に自身の支払能力をしっかりと理解し、無理のない範囲での利用を心がけることが重要です。
無理のない利用枠の設定
割賦取引利用可能枠を無理なく設定することが安心してクレジットカードを利用するためのポイントです。
各クレジットカード会社は、利用者の年収から生活維持費やその他の債務を差し引き、無理なく支払える金額を計算しています。
この支払可能見込額を基に、利用可能枠が設定されますが、ここで気をつけたいのは、自分自身でも収入や固定費用をしっかり計算し、どのくらいの額を月ごとに割賦払いで回すことができるかを把握することです。
そして、実際に設定された利用枠は最大限まで使わず、余裕をもった金額で利用することが望ましいです。
計画的な利用と返済を継続すれば、安心して割賦取引を使い続けることができます。