年金担保貸付制度が廃止され、年金受給者が資金調達の選択肢を見直す必要があります。
本記事では、生活福祉資金貸付制度や年金受給者向けローン、リバースモーゲージなど、年金担保貸付制度の代わりに利用できる借入方法を10種類紹介します。
資金用途や審査条件に応じて最適な方法を選ぶことで、安心して資金を確保することが可能です。
年金受給者が利用できる公的支援や金融機関のサービスを詳しく解説し、賢く資金を調達するためのポイントをお伝えします。
年金担保貸付制度とは?廃止の背景を知る
年金担保貸付制度の概要とその役割
年金担保貸付制度とは、公的年金を受給している方が、その年金を担保に資金を借りることができる融資制度でした。
この制度は、医療費や介護費用、住宅の修繕費用のような急な出費や生活必要資金の確保を目的として提供されていました。
年金受給者は、200万円までの年金担保融資を利用することが可能で、一時的な資金不足を補う手段として役割を果たしていました。
融資金額は10万円~200万円の範囲内で、年間の年金受給額の80%を上限として決定されました。
また、返済方法は年金の支給時に天引きされるため、確実な返済ができる仕組みとして、多くの年金受給者に利用されていました。
しかし、制度の利用にあたっては審査が必要で、一定の条件を満たす必要がありました。
廃止に至った背景と課題
年金担保貸付制度は、2022年3月31日に廃止されました。
その背景には、年金の本来の目的である老後の生活支援が果たせなくなる懸念がありました。
具体的には、この制度により年金受給者が利用目的を問わず借り入れを行うことが増え、生活そのものが返済に追われる状況を生んでしまうケースも多かったことが問題視されました。
また、他国と比べて日本の年金制度が収入の維持支援に十分対応していないことも課題として挙げられます。
この結果、年金担保貸付制度が生活困窮を助長すると判断され、廃止が決定されたのです。
利用者への影響と対応策について
制度の廃止により、これまで年金を担保として融資を得ていた方々にとっては新たな資金調達手段を探す必要が生じました。
特に、高齢者層にとっては他の融資制度への移行が困難な場合も多いことが懸念されています。
そのため、政府や地方自治体では、生活福祉資金貸付制度の利用や福祉機関による支援体制の強化が進められています。
この制度の代替策として、低所得者向けの無利子・低利子の貸付商品が提供されており、新たな支援策への利用促進が求められています。
他国における類似制度の事例
海外では、日本と同様に年金を担保として資金を融資する制度を持つ国もありますが、その運用方法や規制が異なります。
例えば、アメリカではリバースモーゲージのように高齢者の資産を活用した融資制度が広く普及しています。
一方で、ドイツやスウェーデンのように福祉国家の色合いが強い国では、公的な福祉支援で高齢者を支える仕組みが中心となっています。
これらの事例から、日本でも個別の状況に応じた支援策を導入することで、年金担保貸付制度が廃止された後の高齢者支援を強化することが可能です。
廃止後の周知とサポート体制
年金担保貸付制度の廃止に際し、政府と福祉関連機関は情報の周知と相談体制の整備に注力しています。
地域の自立相談支援機関や厚生労働省の窓口では、年金受給者が利用可能な融資制度や支援策についての情報提供が行われています。
例えば、生活福祉資金貸付制度や特定の医療費支援など、高齢者のニーズに応える具体的な制度が案内されています。
また、公的支援だけでなく、NPOや福祉団体による支援活動も進展しています。
これにより、年金受給者が新たな融資手段を見つけやすくなり、一時的な資金不足に対応できる環境の整備が期待されています。
違法な年金担保融資に注意する
年金受給者から年金証書や預金通帳等を担保に預かり、年金担保融資と称して高金利で貸付を行うことは違法です。
「独立行政法人福祉医療機構」の年金担保融資では、年金証書や預金通帳等を担保に預かることはありません。
また、「偽装質屋」と呼ばれる、高齢者等に対して担保価値のない物品を質に取り、実際には年金などを担保として高金利で貸付を行う業者にも借りてはいけません。
- 年金が振り込まれる口座から融資の返済を受けることを目的として、借入者に対して、年金受給者の年金証書、預金通帳やキャッシュカード、あるいは年金証書などの引き渡しもしくは提供を求め、またはこれらを保管する行為
- 年金が振り込まれる口座から融資の返済を受けることを目的として、借入者に対して、年金が振り込まれる口座からの自動振替を金融機関に依頼するよう求める行為
「年金受給者大歓迎」「2ヶ月に一回の返済可能」など、年金担保融資を連想させるような文言を使った広告は禁止されています。
令和4年4月以降に、年金受給権を担保とした金銭の借入申込を受けるものは、例外なく全て違法な年金担保融資となります。
年金担保貸付制度の代わりとなる借入方法10選
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、低所得者世帯や高齢者世帯を対象に設けられている公的な貸付制度です。
この制度は、高齢者の生活支援や一時的な資金需要を支援するために運用されており、年金担保貸付制度の終了後の代替案として注目されています。
借入金額や貸付条件は自治体や状況により異なりますが、無利子または低利子で利用できるのが特徴です。
特に、生活に困窮している年金受給者にとって頼れる選択肢となっています。
シニア向けローンの特徴と活用方法
シニア向けローンは、特に高齢者を対象に開発された金融商品で、リタイア後の生活資金や医療・介護費用の負担を軽減するために利用されています。
多くのシニア向けローンは、収入が主に年金である場合でも審査が可能であり、借入条件が緩やかなのが特徴です。
また、リバースモーゲージ型ローンといった自宅を担保とする商品も含まれるため、商品選びの際には詳細な条件を慎重に確認することが重要です。
信用金庫や地方銀行の高齢者向け商品
地元に密着した信用金庫や地方銀行では、高齢者や年金受給者を対象とした金融商品が提供されています。
これらの金融機関は地域の事情を理解していることから、個々の状況に応じた柔軟な対応が得られる場合があります。
例えば、年金振込口座を利用している場合に優遇金利が適用される商品や、融資限度額が比較的大きく設定されるローンなどがあり、用途に応じて利用を検討すると良いでしょう。
NPOや福祉機関の助成プログラム
NPO法人や地域の福祉機関では、高齢者を対象とした助成プログラムや貸付制度が用意されています。
これらは営利を目的としないため、比較的低利率での融資や無利子の助成が受けられる場合があります。
また、一部の福祉団体では、医療費や生活費の負担軽減を目的としたサポートを行っている場合もあるため、利用可能な選択肢としてリサーチする価値があります。
カードローンなどの金融機関商品
カードローンは、年金受給者でも利用できる場合があります。
一部の金融機関では、年金を安定した収入と見なして審査を行い、最大300万円程度まで融資可能な商品が用意されています。
利用目的が特に限定されることがないため、急な支出にも柔軟に対応できるのがメリットです。
ただし、金利が高めに設定されている場合もあるため、計画的に利用し、返済スケジュールを充分に立てることが重要です。
年金受給者でも借りれる消費者金融プランネルは、テレビショッピングでよく知られている日本文化センターグループが運営しています。
プランネルは、85歳まで融資対象と年齢制限を高く設定されており、高齢者にも幅広くサービスを提供しているようです。
厚生労働省や地方自治体の相談窓口
年金担保貸付制度が廃止されたことにより、金銭的な不安を抱える年金受給者の方も少なくありません。
このような場合、厚生労働省や地方自治体が提供する相談窓口を活用することが重要です。
例えば、厚生労働省の「生活困窮者自立支援室」や「生活福祉資金制度相談コールセンター」では、生活困窮者向けの支援策や貸付制度についての相談が可能です。
また、自立相談支援機関では地域に根ざした個別対応が行われており、年金受給者の方でも具体的なアドバイスを受けることができます。
無料法律相談や福祉相談の活用法
年金受給者が資金面や生活面で課題を抱えている場合、無料で利用できる法律相談や福祉相談も非常に役立ちます。
各地の弁護士会や司法書士会では、年金に関する疑問や融資に伴うトラブルについての無料相談を定期的に実施しています。
また、地域の社会福祉協議会やNPO法人では、福祉に関する助成制度やサポート内容についての相談も可能です。
このような窓口は専門家の視点で適切な提案をしてくれるため、困ったときには迷わず利用を検討しましょう。
年金生活者支援給付金の申請について
年金生活者支援給付金は、収入が少なく生活が厳しい年金受給者を支援する目的で提供される公的給付制度です。
この給付金は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受給している方で一定の所得基準を満たす場合に受け取ることができます。
申請は市区町村の窓口で行えるため、申請方法や必要書類を事前に確認しておきましょう。
定期的に受け取る年金とは別に支給されるため、生活費の補填として大きな助けとなります。
福祉医療機構等の活用可能な制度
独立行政法人福祉医療機構では、医療や福祉に関連する資金の貸付や支援を行っています。
特に、年金担保制度が廃止された今、代わりとなるサポートを提供する機関として注目されています。
また、福祉医療機構だけでなく、母子父子寡婦福祉資金貸付金や高額療養費制度なども利用できる可能性があるため、自身の状況に合った制度を探すことをお勧めします。
審査や貸付の詳しい条件については、各制度の窓口へ直接問い合わせると良いでしょう。
地域コミュニティでの情報ネットワーク
地域に根差したコミュニティや情報ネットワークを活用することも賢い選択です。
地元の社会福祉協議会や町内会、地域包括支援センターでは、高齢者を対象とした支援や地域独自の取り組みについて紹介しています。
また、地域によってはNPO法人やボランティア団体が年金受給者向けの独自の支援プログラムを提供していることもあります。
多くの場合、地元で開催される交流イベントや勉強会に参加することで情報を広く得ることができます。
こうしたつながりを持つことで、有益な情報を共有し合える環境を作ることが可能です。
借入時の注意点と賢い資金計画の立て方
融資を受ける際に確認すべきポイント
融資を受ける際は、自分の収入や返済能力を正確に把握することが重要です。
年金を主要な収入としている場合、毎月の年金支給額と生活費のバランスを確認し、それに基づいて借入金額を計画する必要があります。
また、年金担保制度が廃止された現状では、新たな融資方法の利用条件や金利・手数料について詳細に確認しましょう。
特に、「低金利」や「無担保」をアピールする商品でも、別途費用やリスクが伴う場合があるため、契約前に内容をしっかり読み込み不明点を問い合わせることをおすすめします。
適切な借入先を選ぶ方法
適切な借入先を選ぶためには、まず公的貸付制度や社会福祉団体が提供する融資制度を検討するのが賢明です。
生活福祉資金貸付制度や福祉医療機構のローンは、年金受給者でも利用可能な場合があります。
また、地方銀行や信用金庫では、高齢者向けに特別設計された融資商品を取り扱っていることがあるため、地元の金融機関への相談も有効です。
その際、契約条件や金利設定が透明であるかを確認し、不安がある場合は無料相談窓口や専門家に相談するのもひとつの手です。
返済計画を立てるためのコツ
返済計画は無理のない範囲で現実的に立てることが大切です。
まず、借入額だけでなく金利や返済期間を含めた総返済額を計算し、それを月々の収入で無理なく支払えるか検証してください。
年金受給者の場合、毎月の支払額が生活費を圧迫しないように調整することが重要です。
また、臨時収入や貯蓄がある場合は、それを返済に充てられるかも考慮し、早期返済を目指すと負担を軽減できます。
金利を抑えるための工夫
金利を抑えるためには、できる限り低金利の商品を選ぶことがポイントです。
例えば、公的な資金貸付や福祉関連の融資商品は、一般の金融機関のローンよりも金利が低く設定されている場合があります。
また、借入期間を短く設定することで、総返済額を減らすことも効果的です。
一方で、一部のカードローンでは初回契約時に無利息期間が設けられている場合もあるため、緊急支出に対応する選択肢として確認してみるのも良いでしょう。
トラブルを避けるための注意事項
借入時には、契約内容を詳細に確認することが大前提です。
特に、年金担保制度が廃止された後は、代替手段として利用できる融資商品について詐欺まがいの勧誘や高金利の契約に巻き込まれるリスクが高まっています。
契約前に金融機関や貸付元の信頼性を必ず確認し、不明点があれば金融庁や自治体の相談窓口に問い合わせるのがおすすめです。
また、借りすぎや過剰な契約条項が家計を圧迫する原因ともなるため、慎重な判断が求められます。
自分の年金がどうなっているか知りたい! どうすれば?
自分の年金がどうなっているか知りりたい場合の方法は以下の3つがあります。
- ねんきん定期便
- ねんきんネット
- 年金事務所に問い合わせる
1. ねんきん定期便
「ねんきん定期便」は、国民年金および厚生年金保険に加入している方を対象に、毎年誕生月に日本年金機構から郵送され、国民年金や厚生年金の加入履歴が記載されています。
今まで年金を、何ヶ月掛けていて、いくら保険料を払ったのか、その保険料に対していくらの年金をもらえるのか記載してあります。
また、直近1年間の年金記録も載っていますので、確認してみてください。50歳以上の人にはこのまま60歳まで加入したと仮定した年金額の見込みが記載されます。
年金を納めている期間が短くなると受け取れる老齢年金の金額に影響があるので、未加入期間(未納期間)がないかを必ず確認しましょう。
2. ねんきんネット
パソコンやスマートフォンからいつでも最新の年金記録を確認できる「ねんきんネット」があり、いつでも最新の年金加入記録の照会や見込み額の試算、電子版「ねんきん定期便」などの確認ができます。
年金情報の確認だけではなく、年金受取開始の年齢を「繰り上げ」「繰り下げ」した場合など、さまざまな条件に応じた試算もできるので便利です。
ねんきん定期便は1年に1回しか送られてきませんが、リアルタイムで知りたい場合は「ねんきんネット」に登録をしましょう。
3. 年金事務所に問い合わせる
詳しく年金制度の説明を聞きたい場合には、最寄りの日本年金機構に予約を入れて訪問します。
最新のデータを元にていねいに説明してもらえます。
現在、年金事務所を訪れる際、ほとんどの人が予約をしていて、予約なしで行くと長時間待たされたり、最悪その日に相談を受けてもらえない場合もありますので、必ず予約をしていきましょう。
予約は予約専用ナビダイヤル【0570-05-4890】で受け付けています。
また、【0570-05-1165】にて電話での相談もできますが、ナビダイヤルは、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)が提供するサービスで、料金無料のフリーダイヤルとは違い通信料は有料となります。
障害年金受給請求で知っておきたいこと
障害年金の受給申請で、是非知っていてもらいたいことがあります。
例えば、障害年金手帳3級を持っているとしますと、現在も心療内科もしくは精神科に継続的に通院されている状況であれば、現在通院している病院に1年6ヶ月以上通院している場合、主治医に年金の申請依頼をすることが可能です。
年金には「事後重症化」と「訴求請求」の2種類があり、5年遡って請求できるので、もし以前通院していた病院があれば、カルテ開示してもらって下さい。
もし障害年金の受給申請が通れば、一時金として場合によっては300万円以上が振り込まれ、かつ隔月の受給が可能です。また、初診時に厚生年金だったか国民年金だったかにもよります。
厚生年金でしたら3級から請求できますが、もし国民年金だった場合は2級からでしか請求できないので、ハードルは上がります。
しかし、仮に年金に該当しないと厚生労働省から通知が来ても、不服申し立てはできますが、3級は「日常生活に困難があること」、2級は「就労に困難があること」が前提です。
そこで不安かと思いますが、管轄ハローワークの「専門援助部門」に相談してみることも一つの方法です。